障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会

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季刊グループホーム 2023冬 Vol.79

特集 第19回日本グループホーム学会 全国大会「本人の意思に基づいた多様な暮らしの実現のために」

特集にあたって

私事ですが、私は2002年の秋から2006年の春までグループホームの世話人をさせていただいていました。措置から支援費制度に移行する頃で、障害者自立支援法になる直前までです。私は世話人をする前に知的障害者授産施設や知的障害者更生施設で生活支援員をしていました。入所施設で利用者と関わっていた私としては、地域でご本人さんの支援をすることに、とても理想を持って世話人を始めたことを覚えています。

「さあ、長年入所施設で暮らしていた方が地域で生活できる! みんなのやりたいことをしっかり応援していくぞ!」という気持ちでスタートしました。しかし、実際に支援が始まるとさまざまな現実にぶつかります。入居者さんは長年入所施設で生活してきた方や、長年日中活動にも行かず、自宅だけで(もしかして就学猶予で学校にも行っていないかもしれません)過ごしてきた方でした。そういう背景からか、やりたいことや望みを生むことさえも難しくなっている状態でした。朝支援に入ると、調理用の砂糖が激減していたり、ウインナーソーセージが袋ごとなくなっていたりすることで、食べることのニーズは少し伝わってきました。しかし、休日はじーっとして時間が過ぎるのを待っていたり、毎日お金を持って歩いているのに、こちらからの声掛けがない限り買い物すらしなかったりという状態でした。活動も余暇も与えられるばかりの施設で暮らしているとこうなってしまうものなのだと痛感しました。その後は、相方の世話人と一緒に試行錯誤、ヘルパーさん(当時、ヘルパーさは入居者さんの生活に欠かせない存在でした)にも協力も得ながら、個々の思いが生まれ、表出できるようにいろいろと取り組んだことを思い出しました。

今回の全国大会では、援助のポイントや意思決定支援、さまざまな暮らしの形も知ることができました。当時の私がタイムスリップできたらよかったのにと思うような内容です。大会趣旨にもありますが、グループホームはご本人個々の望む生活の実現であり、「本人の意思に基づいた多様な暮らしがあるべき」という視点にたち、もう一度考えていただけたらと思います。

薬師寺明子(障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会)

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